鉄斎の先駆　蝦夷風俗図

江戸幕末・仙台の儒者、小野寺鳳谷が題した蝦夷風俗図です。

蝦夷風俗図は、江戸後半の蠣崎波郷（1764-1826）、明治の富岡鉄斎（1837-1924）の作が有名ですが、本作は二つをつなぐ数少ない遺例として日本美術史にとってもたいへん重要な画です。

軸装硬木軸、紙本墨画着彩
サイズ
表具　1955mm×440mm
画心　1285mm×305mm

題１
雪記隆冬花記春，
人皆老別了形身。
由来歴日知何用，
真是無為太古民。

落款「『蝦夷竹枝百首』之一併録，為白逢山口君之嘱。仙台鳳凰野史證。」、
「庇山航海逸士」白文印、「鳳谷謙君鳴」朱文印

題２
蝦夷風俗自無為，
只見阿寒愛戯児。
一葉疑冬大将軍，
不知世上有油花。

落款「松陽老人題。」「字小翁」朱文印

題１を仙台藩の儒者・小野寺鳳谷が書いています。
絵画としても味わい深く、 幕末の蝦夷風俗を写した歴史史料としてもたいへん貴重です。

小野寺鳳谷 おのでら-ほうこく　1810－1866
江戸時代後期の儒者。文化7年生まれ。陸奥仙台藩茂庭氏の家臣から藩校養賢堂指南役となる。学頭大槻習斎の指示により洋砲の鋳造,軍艦の建造の監督にあたった。のち三浦乾也の協力をえて,洋式軍艦開成丸を完成させた。慶応2年4月13日死去。57歳。名は篤謙。字は君鳴。通称は謙治,謙吾。著作に「開成丸航海日誌」など。